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honjitu no hirose

広瀬ヒロ

虚空に向かい思考を吐露して17年。 伴侶は孤独、幼なじみは希死念慮、命を支える偉大な信仰、降谷零。 自己葛藤から抜け出せない永遠のモラトリアム中年。引き続き、七転八倒をお楽しみください。

「私の行き方」の感想レビュー


私の行き方 阪急電鉄、宝塚歌劇を創った男 (PHP文庫)私の行き方 阪急電鉄、宝塚歌劇を創った男 (PHP文庫)
(2006/09/02)
小林 一三

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小林一三はですね、昭和初期の大実業家で、都市開発の帝王です。
もともとは鉄道会社(のちの阪急)の経営陣だったんだけど、鉄道で儲けるために、沿線に住宅街を作り、人を呼ぶため温泉施設、遊園地、宝塚歌劇団、そして阪急デパートを作った人です。

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青年は如何なる仕事につくかもその仕事に意義を見いだせ。
仕事を通じて人類の生活なるものを考えよ。事務の倫理化につとめよ。(略)
なお最後に
仕事さえよくできればそれでも良いというものではない。ぶっきらぼうではいけない 愛嬌も必要である。
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≡┗( ^o^)┛サーセンw

そしてなんとこの本、出世する方法の回答が書いてあります。
こんな大事なことが600円で知れるなんてすごい。
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出世する方法はいろいろありますけれども 要するに2つしかない。
その二つとは何であるかというと 重宝な便利な人になること。
是非なくてはならぬ必要な人になることの2つしかないと思います。
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ハッとしたんだけど、私はとにかく仕事柄もあり便利であること一筋できたんだけど、
最近そういう時期はもう過ぎた と言う認識になり、じゃあなんだ?もう体力きついしほどほど人生でいいのか?と思ってたところ、
つまりこういうことかとオモイマシタ。

便利な人になることについては、一翁がミキキシタ人々の話がたくさん乗ってて、
なにすればいいかわかります。
実際はいろいろあって、いろんな人の面白いエピソードもノッテルンダケド、
それは気が利くとか各々の性分頼みのこともあるので、
まずは早く会社行けってことを再三いってます。

じゃあ必要な人間になるのに大事な特色ってどう言うこと?といいますと。
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この特色を得るということはなんでもないようにありますけれども、そう簡単に特色はでるものではありません。
この沿線の開発について百貨店と相ともなってどうしたらいいか とゆうことは、
特色を持つ人でないと 実は立案ができないのであります。
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その天分はこれを指導する方法の如何によってはよくもなり悪くもなるものである。
各人の持つこの天分にさらに磨きをかけて光を発しせしむることによって、
特殊の人物を作りえるということか閑却されるような時代になってきているように思う。
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会社にいると、これはすごい感じる。
企画の腕って、こういうのどう磨くんだ?!って思うこと多いです。
そしてその回答
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この特色を持つ人の特色を発揮せしむる教育はどうしたらよいかというに本人が
天分を自覚して自分で勉強するより他に道がない。
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あんたの隠れた才能なんてわからんわ!ということだと思います。たしかに。

この特色をいかした結果が阪急だと思うんですが。

小林一三は、百発百中の企画者なので、事業についても語られてます。
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私はこれからの道は経費がかからないで自分のちょっとした注意、ちょっとした発明、
お金をたくさんかけないということを 最後までガンバリとおす人 が最後の勝利をえる。
これからの人は売上の増加に努力するよりも むしろ経費をかけないことに努力するべきである。
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これは大事にメモしておきます。

後半は方々の事業についての思うところや展望が語られているんだけど、
現在の東宝(東宝ってもとは東京宝塚劇場の略なんだって)も小林の功績のひとつであり、
当時は好きな人だけが楽しんでた演劇・映画をファミリー向けの大衆娯楽とし、
水物と言われたこの業界に正当な意味での経営を持ち込んだのもこの人のようです。
そして、プロ野球の発案もこの人のよう。
あと、宝塚に足りないものとして、
宝塚がそうなるかわからないが、大衆向けの男女のオペレッタがいつかくるだろうと予言してます。
これ劇団四季ですね。
ほんとすごい。近代日本娯楽の始祖ですね。


私はこの時期の実業家の話がすごい好きなんだけど、特に小林一三がすきなので何冊か読んでます。
説教じみてるところあるし嫌な店名指しで書いてあったり嫌なおじいちゃんだな、
と思うところもあるけど、その人生に夢があるんだよね。
時代的なものもあると思うけど、いまの世の中でここまでの大事業は民間ではできないと思う。
そして、一三はもとより、この時代の実業家はすべからく
「事業により人々の生活を向上させ幸福な世の中を作りたい」
というのが根底にあってその志の成果として現代社会の文化的生活の基盤が作られたわけで、
こういうのにすごい憧れる。


実は私のいるエンタメ系のIT業界というのは、いまモバゲーみたいなソーシャルゲームがバブルにありまして。
あれはひとつあたれば速効性のある莫大な利益を生むんですね。
そして、それを金太郎飴よろしくキャラだけ変えてコピーすると、
低コストでどんどん利益をあげることができるのです。
なんとかロワイヤルみたいなね。
で、独自性がなくなるから漫画とタイアップしたり小手先変えてるわけです。

私の部署はそういう利益のお陰で暮らしてるのでなんとも言えませんが、
私はそれは、お小遣い稼ぎの域をでないことで、事業とは違うと思うんだよね。

そういう風潮にあることにだれもなにも思わないことへの違和感を、
前々からぼんやりと感じています。

そして、この本を読んで、やっぱりなにか違うと感じた次第です。


さらに。
小林一三の本はほんと人気がなくて、軒並み絶版のため、毎回図書館だのみでして。
調べるとアマゾンでも評価いいのに全然人気ない。
その秘密が本文に散見されてます。
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使う者の心持ちよりもむしろ自分のなすべきことをよくわきまえ、これに対する自分の気持ち、
つまり使われる者としての心持ちを明確に自覚し、
どうしたらうまく使われるかをしょっちゅう 念頭においてことにに当たってゆけば良い
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私は常に平凡主義という事を言ってんおりますが
平凡なことを課してそれが完全に実行される人ならば 将来見込みがあると考えております。
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これはいまの世の中受けないわw


しかし、これが世の中の真理だと思う。
実際、良い社長になる人ってこういう人だと思う。
そして、
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一寸先の足元1ヶ月先の思索 1年先の計画など、あーでもない こーでもないといろいろの灯影に、忙殺、混乱、奮闘の世界のすみずみを見渡して 毎朝 我が家の門を飛び出す時から
「働けば良い それから先は運命だ。ほがらかに 清く正しく働くことが我が一党のもっとーだ。
さあ 付いて来い いくじのない 若いやつよ」
という心持ちでその日その日を送っている私には現在も青春時代のような空想ー実は私はそれを理想だと信じて決行しつつあるのである
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私もこんな老人になりたい。


蛇足だけど、
本読む→
ブログ用に読みながら面白いところスマホの音声解析で音読して入力→
音読効果で結構覚える→
本の中に興味深い人がいる、影響を受けた本のタイトルなどがある→
スマホで図書館の予約ページ開いて著書を予約、取り寄せ→
(すごいのは蔵書が豊富で大体の本がある所)
取り寄せた次の本よむ
というサイクルが神過ぎてすごい。
しかも、すべて無料。
何があっても目黒区から出たくないですね。ほんと。


次は、電力王とうたわれた松永安左エ門を読むべく予約しました。
名前だけは知ってたけどなかなか変人のようです。

この本での松永のエピソードによると。

松永は慶応出たあと、商館に法被姿で出入りして同窓にバカにされ、実家の元使用人だった貿易商が心配して様子を見に来たとき、松永は夕食に小汚ない飯屋に貿易商をつれていく。
貿易商は、私ですらこんなご飯食べたことないと箸をつけない。
そこでの一節。
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「こんな飯とは もったいないことを言うな。自分で働いてたべるめしの味!僕は毎日ここで随喜の涙を流しで食べているのだ 。乃公はこうして初めて飯の真のあじをしって感謝しているところだ」
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卒業式では
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「卒業したからって何を記念するんだ。学校出たくらいで記念だのめでたいだの有頂天になるような男が社会に出たからといって何ができる。僕はそんなこと真っ平ごめんだ」
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呼んだときびっくりしたけど、実は私は一字一句同じ理由で成人式やってません。

親しみを覚えるぜ、電力の鬼。


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