めでたしめでたしの向こう側
ある朝起きて。
はたと、自分の人生が「めでたしめでたし」の向こう側に来ていることに気がついた。
どんな人でも、人は何かを目指した時に、何者かになりたいと思ったときに、
人生のめでたしめでたしを求めると思う。
仕事でこうなりたいとか。
こういう仕事に就きたいとか。
誰もが羨む人と結婚したいとか。
趣味の世界でこういう立ち位置を築きたいとか。
そして、その「めでたしめでたし」をかなえるために、旅にでる。
それは何者でもない自分を、何者かにする旅なのだと思う。
「めでたしめでたし」が高い山であればあるほど、一心不乱にその山を駆け上がっていくことになる。
登ってる時はその山がどれ位の高さかなんてあんまり分からない。
だから時々、山の中腹で「もうそろそろいいでしょ、相当登ったよ」と思うこともある。
そういう時に限って、運命は、山道を登れと背中を押してきたりして、また人生の「めでたしめでたし」という山頂に向けて、登山をし続けることになる。
でも「めでたしめでたし」するとどうなるんだろう?人はどういう心理になるのだろう?とはつねづね思っていた。
去年、ある会社に入って。
久々の険しい山登りという名の仕事は大変に楽しくて。(それが1月頃の話だけど)
これからまだまだどんどん山登りをするものだと思っていた。
だけど。
私は今、毎日すごく早く帰って、音楽聞きながら同人誌読んで、休みの日はオタクイベントにいそいそ参加してはとっても楽しく遊んでる。
いままでそういうものは「自分が何者かになることを目指す興奮」より色あせて見えて、すぐに興味を示さなってしまっていたのに。
つまり、何者かになることに満足したのだ。
その時にふと、もしかしたら、私の「めでたしめでたし」は今の会社に入った時に完成してしまったのかもしれないなぁと思った。
貧しい村のなもなき農民の娘は、ひとり街に出て勉学に励み、色々な人に導かれ、ちいさな国の家臣として幸せに暮らしました。
めでたしめでたし。
さて。
人は、「めでたしめでたし」するとどうなるのか?
まず、「そもそも、自分は何者でもない」と思えるようになった。
何者かになりたいと思ったのに、何者でもないことを旅路の果てにみつけたのだ。
そして、自分という人生に以前より執着しなくなった。
以前はブログでも私は自分のことばかりと言わたが、良く考えてみたら「自分が何者かになる」ことに並々ならぬ血熱を注いでたのだから、自分のことばかりで当たり前なのだ。
そうじゃなきゃなにかを成すことなんてできない。
自分に執着しなくなるというのは、どういうことか。
まず、苦しみから解放される。
「自分ができない」「自分が失敗したくない」「自分がダメなやつだと思われたくない」「自分がこう思うから」
あらゆる「自分が」から解放されると、死にたくなるような恐怖がなくなる。
自我執着を捨てられると、「自分がこうなりたい」「自分がこうしたい」もなくなるので、前よりも「今」に集中する。
「今楽しい」ならいいじゃん。
「今苦しい」ならどうしたらいいかな?
そういう当たり前のことが分かるようになってきた。
そして、周りを認められるようになる。
あいつはなんなんだとか、イライラしない。
見下したりもしない。
「何者かになりたい人」にイライラをぶつけられても、「あぁ在りし日の自分のようだ~」と生暖かく見守ることが出来る。
普通に怖いけど。私もこうやって周りを怖がらせてたんだな~wって思ったりする。
そうやって、自分に執着しなくなり、周りを認められると何が起きるか。
成長しなくなるのだ。
人間は「こうじゃだめだ」「ああはなりたくない」「ああなりたい」という気持ちが無かったら成長しない。
現状を認めたら、その人はそこで止まるのだ。
成長はとまるけど、「めでたしめでたし」のあとにふさわしい、暖かい日なたで心安らかに生きていくことが出来る。
世の中、本当にうまいことできている。
この世に全てを手に入れられる楽園はないのだなぁ。
最近、「これから何者かになる旅に出る人」に会うことが何回かあった。
「何者かになる旅」は人生そう何度も出られるものじゃない。
体力も覚悟もいる。
けれど、その最中にいる時の輝きというのはそれ以上の彩りを人生に与えてくれる。
これからあの輝きを味わうなんて、なんて羨ましいんだ。
これからその旅に出る人たちの夢と不安に溢れた強い横顔を見て、そう思う春の日でありました。
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3 Comments
そうですかねぇ。激動の人生すぎたので、もう40位でフィニッシュでもいいのでは?とか思ってしまいます。笑
新しいお話あるといいですねぇ。
>めでたしめでたし…と言って完結するには早すぎるご年齢かと思います。きっとこれからまた新しいお話が始まりますよ。
新しいお話あるといいですねぇ。
>めでたしめでたし…と言って完結するには早すぎるご年齢かと思います。きっとこれからまた新しいお話が始まりますよ。