目黒区で売っている麻薬の話。
用があって、学芸大学駅に行った時なんですけど。
外食するほどゆっくりも出来なかったので、
「あぁ、そういえばこの先に人気のパン屋さんがあったような。それ買って家で食べようかな。」
と思いまして。
行きました。
しいの実社っていうパン屋さん。
そもそも月に1回パン食べればいいほうっていうくらいパンに興味がないので、何の期待もなく、適当に入り、適当に買いました。
ツイストドーナツ チョコ味 130円
ミニバケット 130円
パンプキンパン 250円
野沢菜おやきパン 180円
こんな感じ。
パンプキンパンとおやきをお昼に食べて、おやつにツイストドーナツでも食べて、ミニバケットは冷凍でもするか、という布陣です。
記憶なので値段は若干違う気がしますが、とりあえず安い。
で、家に帰ってパソコンひらきながら、まずパンプキンパンの袋をあけました。
パンプキンパンは、パンプキンの黄色いほのかな色がついた、米粉的なもち系の丸いパンです。
ちょうど両手にすっぽりおさまるような、ふわわふわでボリュームのあるパン。
大きいので半分食べたら飽きるだろうな~と思いながら、一口食べまして。
そしたら次の瞬間。
パンが消えたんですよ。
そこそこの大きさのパンが、丸まるいっこ。
跡形もなく消える。
正確には焦げ茶色のテーブルの上に、パンプキンパンの粉が微かに散っていて、パンプキンパンは確かにそこにあったはずなんです。
でも、記憶もない。
一秒前まではあったはずなのに。
え????こわすぎない????
ホラー???
あまりの恐ろしさに、消えたパンについて、呆然としながら考えたんですけど。
みなさん、フロー状態って知ってますかね。
(熱中して絵とか創作しているとあっという間に時間がたつアレ)
たぶんこのパン、一口食べた瞬間に、強制的に無我の境地に入らされるやつなんですよ。
いやもう、美味しいとかっていう感情が全く芽生えないんです。
パンを食べている瞬間、私の自我は完全にパンプキンパンに支配され、体感時間が停止します。
そして、止まった時の中で、ただ、ひたすらにバターをパンに塗り口に運ぶという行動を繰り返し、パンがなくなった瞬間に無我の境地から脱しハッとして、パンがないことに気づく。
お前、何言ってるんだって思うと思うんですが、いや、本当に、もう美味しいとか美味しくないとかそういう話じゃないんですよ。
これね、絶対麻薬入ってますよ。
だって、パンプキンパン、食べた人間の脳を完全に支配しますからね。
基本的に
「パンプキンパンがあるから食べよう」
「パンプキンパンがなくなった」
「パンプキンパンをまた食べたい」
の三種類の思考しかできないようになりますよ。
これ、麻薬の常習性の恐ろしさでよく聞くアレですよ。
麻薬のことしか考えられなくなるって言うアレ。
めちゃくちゃ怖いですよ。
まず起きた瞬間に、
「よし、今日もパンプキンパンを買うぞ」
から一日がスタートしますから。
っていうか、正直に言うと、パンプキンパンを食べた翌日、もう一回わざわざ買いに行きました。
仕事の昼休みに自転車で。
で、その日の昼は、昨日画像取りそびれたから、今日は写真撮ってから食べよう~と思ったものの、その日も、袋をあけたその瞬間に脳がハックされて、気づいたら、またパンが消えてました。
※他のパンも基本的に脳がハックされるので、今回はグルメネタなのに画像がありません。
しかも、パンプキンパンの怖さは、実はここからでして。
2日目の食べ終わった後、唐突に情緒が不安定になったんですよね。
「どうしよう、明日から最短でも、あと5日もパンプキンパン食べられない……」
(※店は土日休みかつ在宅仕事の日しか店に行けないため、滅多にこのパンは食べられない)
パンプキン食べた日の夕方、なんと仕事終わりにもう1回買いに行きました。
しかも、
「こいつ昼にも来たのに夜も来た。まだ買ってから4時間しか経ってないのにどういうことなんだろう…」
と店員さんに思われるのが嫌だったので、行ったことのないもう1店舗のほうまでグーグルマップ使って行った。
必死。
信じられる……?
人間の脳をここまで破壊するパン怖すぎない……?
書いてても普通に怖いですもん。
これが人間のすることか?
ちなみに、最初の2回は2食分として大量に買っても結局パンが無くなるまで食べ続けるマシーンになってしまっていたのですが、3回目に買った時は、ようやく麻薬に耐性が着いてきて、きちんと冷凍庫にしまうことが出来ました。
良かった…
で、ここのパンの美味しさの秘密なんですが。
酵母がものすごい良いんですよね。
かなり独特な酵母で、生地が全体的にみっちりしてます。
どのパンもずっしりした食べ応えのある生地なんですが、かなり細かく膨らむので(バケット等でも大穴が空くムラができない。すごい。)、食べ応えと軽やかさが同居した、モチのような焼き上がり。
ネットの記事を見て美味しいと評判のホットドッグも食べたのですが、こんなにふんわりしっとりしたコッペパンある??ってすごい驚きました。
パン生地がしっとりしてるので、具材とのバランスが良く、味の一体感がかなり高いです。
しかもね、パン自体の食べごたえがあるので、おかずパン系のパンがまたうまいんですよ……
おかずパンがどれだけ映えるかって、7割くらいは具材の美味しさで押し切れるんですけど、残り3割はパンの精度にかかってくるので、そういう点で、難しいところまでキチンと作りこんだ、非常に満足度の高いパンに仕上がってます。
今のところ好きなのは、やはりホットドッグですね。
普通のソーセージに葉っぱ一枚、粒マスタードとケチャップだけの、武士みたいなホットドッグですが、まじで美味しいです。
特に粒マスタードのチョイスがいいですね。パンの強さ、ソーセージの肉感にあった、酸味の少ない粒がしっかりしたものを選んでいて、解釈完全一致感がすごい。
握手させて頂いていいですか、ってなる。
バケットとパンプキンパンも、実は未だに、バター以外を試せてないんですよね。
もうね、バターだけで果てしなく美味しいんですよ。
バター、バケット、コンソメスープ。
これだけで貴族の晩餐。この上ない満足感。
本当は、塩や胡椒、オリーブオイルなどのコンビネーションを開発したいんですけど、まったく、そこまでたどり着かない。
とにかくポテンシャルの高さが凄いですね。
というか、テーブルパンに限れば、これを食べる前までは、浅〇屋のバタール、ジョ〇ル・〇ブションのフォカッチャが私の中での二強だったんですが、(そのふたつも相当美味しいんですけど)
今やもう、
「この世には二種類のパン屋しかない。しいの実社か、それ以外か。」
みたいな話ですよ。
パン業界のローランド、しいの実社。
恐ろしい店だよ。
ちなみに、このパン屋さん。
障害者の支援施設としてのパン屋さんのようでして。
時々、奥から障害者の方が出てきます。
店にいる時「今日は暑いね?!」をレジの人に10回くらい言い続けて、レジの人めっちゃ困ってるっていうありがちな光景もあったりするんですけど。
私の中ではそんなことより
「うわっっっ!!!めちゃくちゃ美味いパンを作ってる神が裏からでてきた!!!」
みたいに毎回動揺してしまいます。
私が不審に動揺するせいで、怖がらせてしまうのか裏にさがられてしまう時もあります。神様ごめんなさい。
もしかしたら、お手伝いかもしれないし、片付けしかしてないかもしれないけど、神のパンに関わってることには変わりないですからね。
ありがてぇ~~~!!!って感じです。
というわけで、皆さんも、平日に学芸大学駅にお越しになるというレアイベントがあった際は、是非、しいの実社にお立ち寄りいただいてはいかがでしょうか。
一緒に合法麻薬パンプキンパン吸おうぜ!
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この記事を書いてから2年近く経つのですが、しいの実社さん、私の中で出禁の店になってます。
なんでかと言うと、毎回物凄い勢いで食べてしまい、恐ろしいほど太るから。
「2食分+冷凍用」として5~6個買って、それを1食で全部食べてしまうことが3回続き、体重計に乗って現実を直視し、出禁になりました。
いや本当に5個買ったら5個食べるし、6個あったら6個食べてしまう。
自制心ってなに???
という邂逅の果て、最近はよく頑張った時とか、何か特別いいことがあった時に行ってます。
で、今日4ヶ月ぶりにいったんですけど。
気が狂うほど美味い!!!!!!!!!!
脳が痺れる~~~~~~!!!!!!!
今日も冷凍用に買った分まで食べてしまった……
というか、今まで買ったパン、冷凍用に出来たこと1回しかない気がする。
結局その日に全部食べてる。
しいの実社の前では人間の理性など塵芥にひとしいのだ……
しいの実社の存在は、人間の欲深い業を映し出す魔の鏡なのだ……
ちなみに最近のお気に入りは、枝豆の入ったパンです。
ものすごい量の枝豆が入ったマヨネーズ風味のパンで、パンのやさしめな柔らかい風味、マヨネーズの塩気と油に、枝豆の歯ごたえのバランスが傑作。
食べごたえもあって強烈に美味しいです。
毎回、唇噛み締めて血の涙を流しながら、1個だけ買うようにするの苦労してるくらい美味いので本当に買って。
(何個買ってもその日のうちに食べてしまう=10個買ったらまじで10個一日で食べかねないという懸念から、最近は1回で買っていいのは5個までと決めているので同じパンを2個買えないのだ……しいの実社でどのパンを購入するかの選抜選挙争いは熾烈なのである)
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