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honjitu no hirose

虚空に向かい思考を吐露して17年。 伴侶は孤独、幼なじみは希死念慮、命を支える偉大な信仰、降谷零。 自己葛藤から抜け出せない永遠のモラトリアム中年。引き続き、七転八倒をお楽しみください。
広瀬ヒロ

コメントありがとうございます。ありがたく拝見しています!

鬼滅の刃から考える事業の成功要因


自分自身、仕事してて事業企画をすることもありますが、まぁ上手く行きません。

周りでも明確に上手くいった案件というのは、「その市場に、その時期、そこそこの資金を注入したプレイヤーであればだいたい成功する」という約束がされた、事前確定案件がほとんどです。

事業企画界隈でよく言われる言葉に、
「成功に理由はないが、失敗には理由がある」
というのがあります。

実際私も、色んな案件を見てきて、「こうなると、○日以内でこういう揉め事が起き、失敗する」という失敗辞典を自分の中で何十も持っていて、日々その辞典に従い、未来に現れる様々な失敗フラグを予見してはへし折って回る、まどかマギカのほむらちゃんみたいな事をやり続けてますが、
じゃあそれですべての失敗を回避したら成功するかといえばそうでも無いのも事実です。
事故のない無難な案件が仕上がります。
まぁ新規事業ってリリースする前でコケることが多いので、リリースするだけでも、そこそこの成果ではあるんですが、でもやっぱり「求めてたものコレジャナイ」感はぬぐえません。

いったい、何が成功の要因なのか?
本当に事業の成功には理由はなく、偶然の産物なのか?

長い間、それにとても興味があって。
その秘密を知りたいがためにサラリーマン生活を続けてると言っても過言ではありません。



そういう流れから、世の中のヒットした物を見つけては、どういう理由でヒットしたのか、その要因を調べるのが好きなんですが、これが、なかなか内情を調べるのが難しいんですね。
インタビュー記事も、外向けのキラキラしたものばかりで対して役に立たないことが多いですし。


そこで鬼滅の話になるんですが。
鬼滅は、なぜか、その内部情報がめちゃくちゃ出てくるんですよ。

というのも、ヒット作のインタビューって、アニメだと監督かプロデューサーが答えるものが多いんですが、鬼滅の場合、映画の宣伝のためにufotableの色んな部門の社員が総出でインタビューに当たってるので、かなり多角的に見ることができるんですね。

特にこのAUTODESKのインタビューなんかは、内部を知る上で読み応えがありました。
コミュニケーションで製品精度が大きく左右されるのは、やっぱりどこも同じなんですな。

で、色々読むうち、気になるワードがありまして。
それは作監か監督がインタビューで答えてた
「鬼滅を読んだ時に、アニメーターが作りたくなる作品だと思った。」
というもの。
鬼滅は、アニメ化してから単行本売上が爆発的に伸びた作品なので、その「アニメ化したくなる理由」にヒットの秘密があるのは間違いないんですが、そこは述べられてないんですね。





で、調べる中で「アニメ化したくなる要素」についてずばり書いてあるインタビューを発見しました。
それがこちらの鬼滅とは関係ないアニメ監督のインタビュー


こんなにテレビシリーズが大ブレイクするとは、ほとんどの方が思っていなかったんではないでしょうか。ヒットした理由には『進撃の巨人』と一緒かもしれません。原作漫画の絵が独特で、絵柄に苦手意識を持つような作品の場合、アニメ化して見た方がマイルドで受け入れられすいんじゃないかと思います。(略)
逆に絵がうますぎる作品はアニメ化しても旨味があまりない。あるアニメ会社の社長からも「絵がうますぎるやつはアニメやらないほうがいいよ」と言われました。



なるほど、わかりやすい。笑
鬼滅の監督が「アニメーターが作りたくなる作品とは何か?」述べなかった理由にも納得が行きます。
流石に担当作品のこと悪く言えないからね。

実際、鬼滅の漫画は、絵が紙芝居調で、ジャンプ作品にしては、動きがあまりありません。確かに絵も独特です。
総合的に見て上手い漫画といえば…やっぱりそれは1~2巻のアニメ化前の発行部数が示している通りだと思います。

一方で、アニメ化したufotableは、鬼滅の漫画になかった「人を選ばない絵柄、ダイナミックな動きや、高度な表現力」を完璧に持っていました。
そして、ufotableは話は作れないけど「世界観やキャラクターの構築、セリフやネームのうまさ」に関しては、吾峠先生の方が、天をも突き抜けるような凄まじい才能を持っていた。

お互いが相補関係にあったんだと思います。

さらにいえば、ufotableと吾峠先生には音楽を作る才能はないけど、梶浦由記にはその才能があり、
泣かせる歌を歌うことは出来ないけど、Lisaにはその才能があり、
最高の演技は出来ないけど、錚々たる声優陣にはその才能があるわけです。

一言で言えば、鬼滅の成功は「餅は餅屋であり、それぞれの餅がお互いの餅の持ってないものを補完しあって生まれた究極の餅作り」なのかなぁ、と思います。


これ、当たり前のような話なんですけど、実は同時期に京アニのヴァイオレットエヴァーガーデンも見たのですが「美術的表現、情緒表現の美しさでいえば国内トップと言っても過言ではない京アニを持ってしても、脚本の出来が半端だと、美術的表現の度合いすら薄れてしまう」
というのを見せつけられたのもあり、
実際問題、制作のプロであっても
「完璧な餅屋を集めても、一人の餅屋が及第点の餅を作っただけで、餅の精度がガクンと落ちてしまう」
ことは、確率的に起きてしまう難しい問題なのだろうと思います。
脚本の餅屋の失敗で頓挫した例でいえば、おっさんずラブなんかもそうですね。

でも、同時並行で制作する中でどの餅屋が折れてしまうかは予見できません。
だからこそ、「成功に理由はないが、失敗には理由がある」と言われる所以なのかなと。

しかし、実は、この失敗をある程度リカバリする方法も世の中には存在していて。

これは、昔サクラ大戦のヒットについて調査した時、記録に読んだまとめで学んだんですが。

まず第一に、スタッフの間でゲームの世界観「太正時代がわからない」という声が挙がっていたことである。

太正時代は、実際の大正をベースに、古今東西の出来事や大衆文化が
虚実ない交ぜになった、サクラ大戦独特の世界観。
太正時代その3 「小説『サクラ』と『海底二万里』」

それをスタッフが共有できないと、作品作りに支障が出る。
そこで広井は『歌』を先に作り、世界観が反映された音楽を
聞いてもらう事で、スタッフに太正時代を理解してもらう事を思いつく。



サクラ大戦は日常パートと戦闘パートがありますが、開発期間の都合上、同時進行で制作し、それぞれを結合して違和感がないか確認したのは、開発の終盤だったそうです。
ものすごいリスキーなことやってますけど、製品として違和感ないのは、やっぱり「全体の餅の世界観の共有(サクラ大戦の場合は主題歌)と、それぞれの餅屋がそれをどう解釈したか」のなせる技なのかなと思います。

脚本でコケる作品は多いですが、これも「脚本家としての餅の世界観の解釈(結局、話の筋として何が重要なのか?)」ができてれば、そこそこの餅は作れたのではないでしょうか。
あと意外なところで、期待をかけられた時に餅の精度ががくんと下がる人はプロでも多く、クリエイティブの素質とは全く関係ないところで、土壇場に強い人間かどうかも影響するのは面白いなと思います。
どんなに完璧な素質を備えて能力が高くても、期待に折れると言うただ一点だけで能力が凡人以下の判定を受けてしまう悲劇は、野球選手なんかで良くみますね。


ちなみにufotableは、アニメ的に鬼滅の世界をどう表現するか?という「アニメ制作会社としての餅の世界観の解釈」に、なんと1年間もかけたみたいです。
やはり時間をかけて練るからこそ生み出せるクオリティの高さというものもあるのでしょう。


そして、その鬼滅の準備に1年かかった話にも繋がるのですが…
よくも、その間の人件費が出たなって話なんですよね…
そもそも鬼滅って、声優陣も凄くて、キャスティング費も相当なことになってると思います。
そういう費用をufotableが出せたのも、ヒットの理由であるでしょう。


今日のまとめ
事業の成功要因は
・毎回100点でなくても、上手くいかない時に及第点を下回る餅屋がいない
・全体の餅の世界観と、それぞれの餅屋の解釈の整合性
・時間的余裕とそれを支える資金力
あたりなのかなと思います。


経験的に思うのは、2つ目の「全体の餅の世界観を作れる人間」ってすごい少ないんですよね。
話で出た、吾峠先生だったり、広井王子さんがそれにあたります。
ほかの餅屋はある程度のキャリアがあれば、十分なレベルに到達してる人は少なくないので、確保は難しくないですが、
これができる人は、本当に生まれ持っての才能次第なところがありますね。
そういう意味では、事業成功の1番の肝は「餅の世界観を作れる人を探してくる」なのかなと思います。

さて、餅の世界観は、ビジネスの世界だと、何を提供するか?という意味で「顧客価値」にあたりますが、面白いことに「顧客価値」には、「顧客価値を提供するためにどう表現するか」がありません。
こうして考えると、それが大事なポイントだろうなと思いますね。

それを示すかのように、今海外ではMBAは流行っておらずMFA(美術学修士)の方が給与も高いそうです。

表現って大事なんだな…
日本の新規事業のについて、色々と考えさせられます。

以上、餅屋についての考察でした。


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