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honjitu no hirose

広瀬ヒロ

虚空に向かい思考を吐露して17年。 伴侶は孤独、幼なじみは希死念慮、命を支える偉大な信仰、降谷零。 自己葛藤から抜け出せない永遠のモラトリアム中年。引き続き、七転八倒をお楽しみください。

わたしの、青春のはなし。

意外に思われるかもしれませんが、私の趣味にクラブ活動があります。爆音で音楽を聴く方のクラブです。

そもそものきっかけは、小学生の頃、ガンダムWの影響ではまったTWO-MIX。(腐ってもオタク)
TWO-MIXはジャンルで言うとユーロビートとハードコアテクノになるのですが、当時はそんなことも知らず聞きまくり、その数年後、まさかの場所で、その音楽と再会を果たします。
それがコスプレイベントの一角で行われていたコスプレダンパ。

「なんだこのめちゃくちゃかっこいい音楽は!!聞いたことないのに懐かしい!!!!100万回聞いてきた気がするし、もう100万回聞きたい!!!!!」

当時、コスプレダンパでは、アニメの他にユーロビート、ハイパーテクノ(ハードコアテクノ)、サイバートランスが流れてたのですが、TWO-MIXの英才教育により、あっという間にその沼に滑落しました。

そこからは、avexのダンス系CDを買い漁り、クラブのvelfarreに行き、ユーロビートのパラパラが400曲踊れるようになり、踊り過ぎで半年で8kg程体重が減るなど、これまでのオタク生活が嘘のようなギャルギャルしい生活に染まります。
(いうて、一番行ってたのはコスプレダンパですけどね。ちなみに、パラパラ業界では「全然踊れない」が100曲レベル、「最低限楽しめる」が400曲レベルで「あの人踊れるよね」と言われるのが1000~1200曲くらい。私はハイパーテクノが専門なのでユーロビートは片手間ですが、それでも400曲は界隈では少ない方です。それらのイントロの数音を聞いて、すぐに踊れる必要があります。狂ってる。)


その怒涛のクラブ活動も、大学卒業とともに卒業したのですが、それ以降も年に1~2回、特定のイベントだけは細々と行っていました。
そのひとつが、新木場agehaというクラブの「Agefarre(アゲファーレ)」というイベント。

Agefarreは、2000年代六本木にあった伝説のクラブvelfarreでみんなが好きだった曲をagehaでかけて同窓会みたいに楽しもうよ。という回顧系イベントで2010年から年一で開催されていたんですが、今年で最終回を迎えることになりまして。

開催場所のagehaも閉店することから、もうクラブに行くこともないだろうと、最後の記念に行ってみました。
というのが今日の話です。前置きが長い。




10月10日の日曜日の昼下がり。
新木場に到着。
とはいえ、コロナもあるし、思い出にちらっと見て帰るつもりでいたんですよね。
フロアの後ろから腕組んで、ゆっくりお茶でも飲みながら、ぼんやり1~2時間眺めて帰ろうかな、位だったので、服も全くクラブ仕様ではない長袖の服で行きまして。

そして、その帰る予定の2時間後。
めちゃくちゃにパラパラ踊らされて、服がぐっしょりになってしまい、着替えのTシャツを物販ブースで買いました。
……。
さすがにクラブでお着替えを買ったのは初めてです。
三歳児か。


で、着替えたあと、メインフロアのトランスを聞きに行ったんですが、その様子に驚いてしまいまして。

いって、選曲もDJも十年間ほぼ固定のイベントなんですよね。
なので、目新しいものは何も無い、むしろそれがいいくらいのイベントだったはずなのに、どのDJも、驚くくらい、全身全霊全力のプレイなんですよ。
これ以上ないほどオーディエンスを楽しませよう。
もうここで、サイバートランスをやることは二度と無いから。
その気迫が、選曲から、プレイから、MCから、強烈に伝わってくるんですよ。

あの時ってこの曲の次にはこれだよね。
みんなこの曲好きだったよね。
みんな覚えてるでしょ。

そういう、当時同じ空間にいたものだけが分かる、メッセージが、あの頃の輝き、華やかさが、音楽を通して胸に伝わるんですね。

そして、どのDJも、みんな、卒業式みたいなメドレーなんですよ。
それは、Agefarreが最後と言うよりも、もうDJ自身の振り返りの全てのようでもあって。
当時のクラブカルチャーの頂点、velfarreでスターDJとして君臨し、30年以上トップDJとして活躍してきた人達の、これまでの軌跡の全てをぶつけるような、そんなプレイ。


その時に、ハッとしまして。
あぁ、これはたぶん、今日のイベントは、Agefarreが最後だからとか、そういうイベントじゃないんだなと。

というのも。
今回閉店するagehaって、国内で唯一の超大箱クラブなんですよね。

agehaの下になると、国内2番手の渋谷wombという中規模クラブがあるのですが、メインフロアの収容客数だけとっても、agehaが1500~2000人に対して、wombは500人くらい。
もちろん音響設備、音の響き方や解放感も全然違います。
何より、wombはクラブオタクのクラブなので、agehaのような、色んな人が観光的に来る、明るいビッグパーティの雰囲気を持ったクラブとはちょっと違うんですよね。
オタクで言うと、コミケと東館全館貸切のオンリー系イベントくらいの差があります。

つまり、agehaの終わりというのは、
「週末の夜、みんなでクラブでめちゃくちゃ楽しもうよ。」
そういう文化自体が日本で終わり、過去にあった文化の話になるターニングポイントなんだと。
そして、DJにとっても、華々しいビッグパーティが出来る最後の機会なんだなと気づきまして。

言ってしまえば、agehaの閉店は、日本のクラブカルチャーが完全なニッチ産業になる、転換期なのでしょう。

コロナによって、クラブのような、めちゃくちゃに騒いで楽しむというカルチャー自体が、時代の雰囲気と合わなくなってしまった事情も大きいと思います。
感染するからダメと言うより、みんながそういうことをしない世界に慣れてしまったという意味で、この文化の熱狂は、既に形を変えてしまったような気がして、胸が詰まりました。



結局、ラストまで聞き続けたのですが、
大トリのDJの気合いが凄まじく、もう一生これを超えるプレイはないと思うような、痺れるような展開でした。
盛り上がれば盛り上がるほど、なんだか最後は、泣けて仕方なくて、マスクがべしょべしょになりました。
目が眩むような光線の嵐も、雨のように降り注ぐ金色のテープも、この音楽を何十年も愛してきたオーディエンスのパッションも、全てが美しかったです。
それを、何十回も立ってきたいつもの場所、右側の階段に立ち、静かに眺めていました。

変わっていくことは、何も悪く無いと思います。
けれど、自分の青春がひとつの時代を終え、風のように過ぎ去って文化の歴史の1ページになることを、無性に切なく感じました

でも、本当に良いパーティでした。
最後にふさわしい、これ以上ないほど良いパーティでした。
この文化を知れて、本当に良かったと思います。









最高の現場をおえて、しんみりとした秋の夜風が心地よい帰り道。
同じくAgefarre帰りの小柄な金髪の女性が、180cm近くあるガタイのいい色黒の彼氏に
「舐めたこと言ってんじゃねぇよテメェ!!」
という罵声とともに、臀部に強烈な蹴りを入れていました。
蹴り慣れてました。脚の入り方も綺麗で、すごい音しましたから。

これでこそ、クラブカルチャー。
気が狂うほどガラが悪い。


















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