バカデカニトリと山賊が住む街。
最近、私の住む街にニトリができた。
それもただのニトリではない。
ネットスラング風に言えば「超絶バカデカニトリ」。
とにかくデカい。
どれ位デカいかと言うと、ニトリの看板と店舗が大きすぎるせいで、かなり遠くから見ても近くにあるような目の錯覚が起きる。
あまりの大きさに、近隣の建物とのパースが狂っているのだ。
何度見ても看板の大きさが尋常ではない。
皆さんも、都下の国道沿いを車で走る時、同じような、目の錯覚が起きるほどの巨大なニトリを見かけたことがあるだろう。
なんと都市部に、あのサイズ感のニトリがオープンしたのだ。
バカデカニトリのために地方遠征をした事もある自分としては「地方の町の特権であったその超絶バカデカニトリがこの街に!!」という興奮は計り知れぬものがあり、当然のように、オープン後すぐに店に行った。
中に入れば、そこはニトリのテーマパーク。
この世のニトリの全てが手に入ると言っても過言ではないほど凄まじい品ぞろえ。
店に入った最初の感想は
「すごい!!東京にいるはずなのに、埼玉感が凄い!!!この建物構造は間違いなく鳩ヶ谷店!!ニトリの買い物終わったら隣のとんでんでお昼食べようぜ!!」
だった。
わかるだろか。
多分わからない人が多いと思うが、東京のニトリと埼玉のニトリは別物なのだ。
渋谷のニトリとも全然違う。
バカデカニトリには、バカデカニトリだけが持つ心沸き立つフィロソフィーが宿っているのである。
そんなこんなで、今日は何も買わないぞ、とふらっと様子見で入っただけなのに、結局「おっ値段以上じゃん」とあれやこれやを握りしめて、ほくほく顔で店を出ることになった。
やはり、見て買える、取り寄せなくて良いというのは強い。
そんなバカデカニトリが我が街に上陸してひと月。
住んでいる街に、面白い変化が起きている。
近所で、ニトリの巨大なマットレスや枕、鍋セットなどを、そのまま直持ちして歩いている近隣住民をよく見かけるようになったのだ。
まず、街を歩いていて、マットレスを担いで歩いている人を見たことがあるだろうか?
私は初めて見た時、明らかに遠目に見えるシルエットがおかしいので、100mほど離れてても「なんかやべぇやつが来るな」という気配を感じた。
すれ違いざま、なんか既視感あるなと思ったが、鬼滅の刃のムキムキネズミに似ていることを思い出した。
YouTube散策してたら
鬼滅の刃:遊郭編のOPにちゃんとムキムキねずみ出てるよってあったから見てみたらほんとにムキムキねずみいたわ🐭 pic.twitter.com/3ZpN8ytA2n
この前など、片手に折りたたみマットレス、片手に鍋セット、さらに三つくらいのエコバッグをぶら下げ、えっちらおっちらと歩く夫婦を見かけたのだが、その姿は、戦後の闇市の買い出しを彷彿とさせるほどだった。
それ以外にも、お風呂の椅子を抱える親、その隣でお風呂の桶を振り回しながら歩いている子供とすれ違ったこともある。
また、他人のことをとやかく言ってるが、私も、買ったゴミ箱が自転車のカゴに入らず、片手運転(良い子は真似しちゃダメ)でゴミ箱を直持ちして持って帰ったので人のことは言えない。
そう、この街の住民。
ニトリの大型商品を、袋を買わず、直持ちで持ち帰りがちなのである。
しかも、少なくない人がそれをするせいで、土日のニトリの周辺は、よく言えば、ディズニー帰りにぬいぐるみやバケツなどのをそのまま抱えて駅へ歩く人達、悪く言えば、パニック映画でスーパーから物資を勝手に担いで運び出す住民たちの絵のようにも見える。
加えて言うなら、ニトリは今、オープン記念で大型商品の無料配送をやっているので、わざわざ持ち帰らくてもいいはずなのだ。
しかも、国道沿いの店舗なので、いつでも腐るほどタクシーは走っている。
にも関わらず、担げるものはとりあえず担いで持ち帰ろうとする近隣住民……
この街には、山賊しか住んでいないのだろうか。
しかし考えても見れば、これだけ住民がニトリで買い物をしているということは、つまりもうこの街はニトリ帝国の支配下に置かれたと言っても過言では無いのではなかろうか。
実際、私の部屋も、既にだいぶニトリに侵食されている。
私の家はバカデカニトリからはそこそこ離れているが、それでもこのザマだ。
今のところ、ファブリックや、ソファ、テーブルなどの大型家具など、部屋のインテリア性に与えるインパクトが大きいため、買わないようにしているのだが、
このままいくと惰性でどんどん「ニトリハウス」になって言ってしまうような気がする。
いや。怖い、それだけはダメだ。
実家みたいな家にはしたくない.。
けれど、バカデカニトリの半径数キロの家は、今まさに、こういう葛藤を抱えているにちがいない。
そして、その抗いも虚しく、次第に各ご家庭はニトリに侵食されていくのだろう。
カッシーナで買ったダイニングセット、スタンレーで買ったオーダーソファ。
それらがどんどんニトリに押しのけられていくのだ。
まさにこの街の家具屋情勢がニトリの上陸により一変してしまったように。
そして、ニトリに首までどっぷり浸かったその先に待ち受けるのは、カインズ、コーナンであり、ロヂャースの上陸である。
この街が「リトル・サイタマ」と呼ばれる日もあるかもしれない。
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